当別ダムについて
愛称について
当別ダムの愛称は”亜麻のふるさと当別ダム”です。(令和6年(2024年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日まで)
詳細は、道管理ダム(当別ダム及び佐幌ダム)のネーミングライツ契約についてのページをご覧ください。(総務部行政局財産課のページに移動します。)
概要
事業の概要と経過
当別ダムは、当別川総合開発事業の一環として、石狩川水系当別川の北海道石狩郡当別町字青山十万坪地先に建設した多目的ダムです。
ダムは、台形CSGダム形式として、高さ52.0m、総貯水量74,500,000立方㎥、有効貯水容量66,500,000㎥で計画されており、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水および水道水の供給を目的としています。
流域の概要
当別川は北海道石狩郡当別町に位置し、その源を暑寒別山系増毛山地の南端、察来山(標高590m)に発し、山間部を南流し、途中一番川、二番川等を合流しながら流下し、石狩川の河口より約15kmの右岸に合流する流域面積309.5km2、流路延長72.5kmの一級河川です。
当別川流域は内陸性の気候を示し、地域差はあまりありませんが、降雨量は台風期に多くなっています。そのため台風期には、豪雨により災害が多く発生しています。
当別川の水利用は古くから行われ、かんがい用水および水道用水の水源等に利用されています。特に下流部は広大な耕地を有し、道央の穀倉地帯となっており、当別町の市街地は当別川の下流部に形成されています。
流域の年平均降水量は約1,500mm、年平均気温は約6℃となっています。
地質の概要
当別ダムは当別町市街の北方約11kmに位置しています。ダムサイトの地質は新第三紀の望来層(シルト岩、砂岩)を基盤として、これを覆って段丘堆積物、崖錐堆積物などが分布しています。
望来層 | 今から約500~1,000万年前に堆積した地層 |
段丘堆積物 | 川の流れによって運搬された堆積物 |
崖錐堆積物 | 山の斜面に堆積した土砂 |
諸元
ダムの諸元
位置 | 北海道石狩郡当別町青山十万坪地先 |
型式 | 台形CSGダム |
堤頂長 | 432.0m |
堤高 | 52.0m |
集水面積 | 231.1km2 |
湛水面積 | 5.8km2 |
総貯水容量 | 74,500,000m3 |
有効貯水容量 | 66,500,000m3 |
平常時最高貯水位 (常時満水位) | EL 57.2m |
洪水時最高水位 (サーチャージ水位) | EL 60.7m |
貯水容量配分図
当別ダム標準断面図(常用洪水吐部)
ダム平面図
当別ダム下流面図
建設目的
当別川は、昭和38年より中小河川改修工事、局部改良工事等が行われてきましたが、昭和45年5月の風雨や昭和56年8月の台風12号など、毎年のように河岸の決壊、はんらんを繰り返してきました。
昭和56年の洪水被害
ダムは、治水(洪水調節)、利水(かんがい・水道用水の供給)、河川環境の保全を目的として建設します。
洪水調節
当別ダムは、抜本的な治水対策を担い、ダム地点の計画高水流量1,220m3/secのうち760m3/secを洪水調節し、当別川沿川地域の洪水被害を防ぐことができます。
流水の正常な機能の維持
ダムは、ダム地点下流の当別川沿川に既得用水の補給を行う等、川の流量を安定させ、流水の正常な機能(水資源保持機能)維持と増進を図ります。
かんがい用水
当別町の農業は、稲作を中心とした札幌圏の食糧供給地区としての都市近郊型農業です。肥沃な大地を舞台に、近代化・経営規模の拡大を果たしてきた農地への豊富な水の供給が必要とされています。当別ダムは、当別地区3,194ha (ダム依存分3,153ha)の農地に対し、最大で13.386m3/sec(かんがい期平均8.989m3/sec、年間0.93億m3)のかんがい用水を確保し、沿川の農地に潤いを与え、安定した生産と農業の発展に貢献します。
水道用水
当別ダムでは、1日最大75,900m3を取水し、浄水処理を経て、石狩西部地域(札幌市※、小樽市、石狩市及び当別町)に1日最大69,000m3の水道用水を供給します。
※小樽市、石狩市及び当別町に対しては平成25年度より水道用水が供給されていますが、札幌市については、令和7年度からの供給開始が予定されております。
★参考(企業団のWebサイト)
https://www.ishikariseibu.or.jp/business.html
河川環境の保全
川は人の生活はもちろん、植物や昆虫、魚や鳥、さまざまな動物が暮らす場所であり、貴重な生命を支える大切な役割をもっています。川の流量が安定しなかったり、減少したりすると、水質が悪化し、流域環境の生態系にも大きな影響をもたらします。
当別ダムでは、川の流量を安定させることで水質の悪化を防ぎ、生態系をはじめとする河川環境の保全に努めます。
ダムの形式(台形CSGダム)
1.台形CSGダムとは
今までのダム型式は、築堤材料により大きくコンクリートダムとフィルダムに二分されます。ダム型式は、ダムサイトの地形・地質条件、材料の確保、施工性など総合的な観点から選定され、各々の特性を活かす中で「設計の合理化」、「施工の合理化」が図られてきました。
しかし、近年の社会情勢、経済情勢の中、ダム建設においては、より一層のコスト縮減、環境への配慮が強く求められています。当別ダムにおいては、基礎掘削により発生する大量の河床砂礫の有効利用を検討する中、国土交通省等で研究開発されている「設計・施工・材料の三つの合理化」を目指した「台形CSGダム」を採用することが、コスト、環境保全の面から最も適正であることが確認されたため、本型式を選定するに至りました。
以下、台形CSGダムの特徴について説明します。
台形ダムの特徴
台形ダムは、コンクリートダムで採用される直角三角形の断面形状に対し、堤体積が大きくなりますが、以下に示す大きなメリットを有しています。
メリット
- 堤体内に発生する応力が小さいため、強度の小さな材料でも堤体材料として使用することができる。
- 荷重条件の変動に対しても、発生応力の変動を小さく抑えることができる。
- 断面形状が台形形状であるため、転倒や滑動に対する 安全性を高くすることができる。
CSGの特徴
「CSG」は「コンクリート」のように材料を指す用語であり、Cemented Sand and Gravelの頭文字で、直訳すると「セメントで固めた砂礫」となり、河原で取れる砂や砂利、土木工事で発生する岩石などに、セメント、水を加えて練り混ぜ、固めた材料を指します。堤体材料に「CSG」を用いることにより、以下に示すメリットが生まれます。
メリット
- 堤体材料として、ダムサイト近傍で容易に入手できる河床砂礫や掘削ズリ(廃棄岩等)を有効活用できるため、原石山の縮小が可能となる。
- 採取した堤体材料は、分級等をせずにそのまま使うため、コンクリートダムのように骨材を製造する設備や、これに伴う濁水処理設備等の設備が不要、もしくは簡素化することができる。
- CSGの打設は、ダンプトラックやブルドーザなどの身近な汎用機械を用いるため、安価で大量・高速施工が可能となる。
台形CSGダムの特徴
この「台形ダム」と「CSG」の要素を合体させた「台形CSGダム」の特徴は、下図に示すとおり、ダム建設における3つの合理化である「設計の合理化」「材料の合理化」「施工の合理化」を同時に達成可能なダム型式であり、一層のコスト縮減と環境保全への効果を期待することができます。
2.台形CSGダムを適用するメリット
当別ダムは、これまで重力式コンクリートダムとして計画されていましたが、 台形CSGダムを適用することにより、以下に示す多くのメリットを有することとなり、コスト縮減が大きく図られることとなります。
基礎掘削により発生する土砂をそのまま堤体材料に利用可能
ダム建設予定地には、20m程度の厚さで河床砂礫が堆積しており、基礎掘削に伴い発生する大量の河床砂礫を、そのまま堤体材料として有効利用が可能です。これにより、基礎掘削工事と材料採取工事を兼ねられ、大きくコスト縮減が図られるほか、土捨場への処理量も少なくなり、環境改変への影響を抑えることができます。
大規模な仮設備が不要
ダムでは、基礎掘削より得られる河床砂礫を、分級等をせずにそのまま堤体材料として利用するため、従来のコンクリートダムで計画していた大規模な骨材製造設備等が不要となるほか、これに伴う濁水処理設備も不要となり、大きくコスト縮減が図られます。
施工の簡略化による急速施工が可能
CSG工法は、ダンプトラックやブルドーザなどの汎用機械による施工が可能であり、また、単位セメント量が少ないこと、ブリージングがほとんど発生しないことから、施工継目・グリーンカット等を必要としません。そのため、大量・高速施工が可能となり、従来のコンクリートダム計画よりも工期を短縮することが可能となります。
ダムの配置が最短距離で設定可能
台形CSGダムは滑動や転倒に対する安全性が高く、従来のコンクリートダムに比べ基礎岩盤の適用範囲が広くなります。そのため、堅硬な岩盤なりに屈曲させた従来のコンクリートダム配置計画に対して、地形条件に着目したダム配置が可能となり、堤頂長を最短とすることができます。
コンクリートダムの配置および台形CSGダムの配置
周辺情報
当別ダム周辺マップ
ダムが建設される当別町は、札幌市と境界を接し、札幌都心部から約25Kmに位置しています。東西に約13Km、南北約47Km、面積422.71Km2の豊かな緑と大地に恵まれた、美しい田園都市です。
管内一の米どころである一方、大都市に隣接する交通の要衝の地として、産業と人の交流も活発です。また、北欧スウェーデンとの独自交流など、文化の香り高い国際交流のまちとして、ますますの発展が期待されています。